紫石温泉、その先に
紫石温泉。「血の池地獄」の奥にある市営の温泉。となり近所には他に温泉らしき建物もなく、島で言えば「1島1リゾート」のような感じで、贅沢とも言えそう。
浴室、湯船の写真はありませんが、泉質は単純泉で、臭いもなく、やわらかいお湯です。これがきらいな人はきっといないな、というタイプのお湯。湯船も「あつ湯」と「普通湯」(ぬる湯ではない)、露天と蒸し風呂があって、210円はお得感かなり大。市営は100円が普通なので、それを考えると高いけれど、設備を考えたら、妥当。
温泉のロビー(?)に、昔の写真がパネルで展示されていて、そこには川辺に打たせ湯のようなものが写っているのですが、その改修後の名残がまだある。今も使えるのかはわかりません。昔の写真に見えるこの川は、もっと自然の川の風情があって、それを間近に打たせ湯というのは、なかなかいいなと思えます。
しかし、今は川にはガッチリと護岸工事が施され、川の風情がない。幅の広い側溝のような感じ。
しかし、温泉のすぐ裏手には山が迫っているので、ちょっと上流に歩けば、自然の川が見られるのではと思い、坂道をのぼってみると、
遊歩道があるらしい。が、地震のせいで入れないことになっている。
けれども、目的は遊歩道でなく、川なので、川沿いの道をのぼる。
ここを左に行くと、遊歩道。まっすぐ進む。
このカーブで、道はしばし川沿いではなくなるが、川の音は聞こえるぐらいの離れ具合。
さっきの写真のカーブを曲がると、こんな感じで山に入っていくような道に。
ちょっと行くと、川はコンクリートの小さ~なダムのような堰で止められていて、その壁面から放水が滝のように落ちていて、さらにその奥にのぼれば、自然の川があるに違いないと思い、あるき続けると、このような山道に。写真では、人にやさしいケモノミチのようですが、実は舗装された後、保守・整備がされていないだけで、コンクリートとアスファルトはまだ続いているのです。
もうちょっと行ったら、自然の川が見えるのでは、と思い直すこと数回。
この辺まで来ると、川は護岸工事から解放されているようなのだけれど、谷が少し深く、草木が茂っているので、ちゃんと川は見えないまま。ちらっと見える限りでは、自然の川の風情があるようで、何となく安心。
それでも、このような深山幽谷に見えるところでも、川沿いの棚地には田んぼ(どうやら今も現役)があって、人の生活圏内。だから、道があって舗装もされているわけです。
しかし、ここまできたら、舗装の終るところ、コンクリートとアスファルトから解放されるところまで行きたいと思い、さらに少しのぼると、
やっと、舗装の痕跡のない道に。
しかし、すずめのお宿(居酒屋でなく、昔話に出てくるほう)がありそうな雰囲気。
薄暗いのだけれども、入っていくと、人が切った竹が転がっていたりして、やはり人が入るから道があるのだなと思うも、
この辺で、道の脇の茂みからカサカサッという音が長く続く。ここに来るまでにも、茂みの中でカサッという音が何度もしていたのだけれど、ぜんぶ鳥だとすぐにわかる音だったので、すぐに気にしなくなっていた。が、ここでのカサカサ音は明らかに鳥でなく、地面を移動する何かの音。きっと小動物。でも、これが林の奥に去って行ったわけでなく、どうもこちらの歩くのに合わせて距離を維持しつつ動いているような感じ。
たぶんタヌキぐらいの小さい動物なんだろうなと思うも、もしも、勘違いして危機感にあふれたイノシシが飛び出して来たら、明らかに勝ち目がない。こっちが持っているものは石鹸とタオルだけだし、足下も街ではく皮の靴だし。
ということで、ここで道も終わっているように見えたし、引き返すことに。(実際はまだまだ道は続いているのですが)舗装が切れて、コンクリートとアスファルトから解放されるということは、動物たちのいる世界に踏み込むということなのかなと。弱っちい靴とタオルと石鹸なんか持って入ってくんじゃねーよ、と動物に言われたような気もして。『もののけ姫』の影響受けすぎかなとも思いつつ、帰ることにしました。
柴石温泉、山奥の温泉場の雰囲気を味わいたいとき、川の音を聞きながら温泉に入りたいとき、山道を独り歩きたいとき、山道を歩きながら考え事をしたいとき、超おすすめです。
湯の街別府、奥が深い。